みことじ合同プロット






「ただいま帰りましたよ、屠自古」
「おかえりなさい、太子」

神子は屠自古と生涯を共にすることを誓い、一つの約束を提案する。
それは「どれほどの日が開こうと、誰とどんな時を過ごそうと、屠自古の元に帰ってくるから、その時は笑って私を迎えてほしい」というものだった。

約束は守られ、その日々はずっと続くかに思われたが、ある時を境に神子の様子が変わり、屠自古の元に帰らない期間が長くなっていった。
そのようなことは前にもあったが、その回数は次第に多くなり、そのころから神子の体調が目に見えて悪くなっていった。

屠自古は神子が自分の元を離れている間、自分もよく知る人物・物部布都のもとに夜な夜な人目を憚るように訪れていることを風の噂で知る。
一方、神子は屠自古に内緒で道教の思想に染まっており、同じく道教を信仰する布都とともに大陸より訪れた青娥の元で道教を学び、その過程で触れた希少な鉱物に体を蝕まれていた。

その日々が続いたとき、もう自分の命が長く続かないことを悟った神子は屠自古のところを訪れると「長い間、屠自古の元を離れる。あるいはもう来れなくなってしまうかもしれない。あの約束は忘れてくれて構わない」ことを告げ、姿を消してしまった。
屠自古はそれに対し、何も言わなかった。
真実を知らない屠自古は、神子の心が自分から離れ、恐らく布都のもとに行ってしまったのだろうと思い、失意の日々を過ごすことになった。






失意の屠自古の前に、道教の刀、七星剣を持った布都が現れる。

動揺する屠自古を殺そうとする布都。
それを助けたのは長らく屠自古の前から姿を消していた神子と、屠自古の見たことのない道士、青娥であった。
布都の目的は「屠自古に一度死んでもらい、亡霊として蘇らせ、復活するまで太子の体を守ってもらう」ことだった。
死んだ者の魂が現世に留まるには強い思いがあったほうが都合がよいため、布都は自分への恨みで屠自古に蘇ってもらおうとしていた。
神子は布都の独断を軽く責め、青娥は布都をたしなめる。

神子は屠自古を連れ出すと、自分の命が僅かなこと、道教を崇め尸解仙となるため一度命を捨てる覚悟を決めていること、その術の実験台に布都が自ら進んで立候補したことを話した。
そのあとで、布都が屠自古の命を奪おうとしたのは、自分たちを守る者がいなくなることを憂い、屠自古にその役目を担ってもらおうとしたための暴走であり、あまり責めないでほしいことを告げた。
屠自古はそれを聞いて、ならば自分が布都の代わりに神子とともに眠りに就きたいと言ったが、道術の嗜みがない屠自古には尸解仙になることはできない上、失敗すれば死んでしまうような術を屠自古にはかけられないと神子に断られる。

屠自古は神子の意思の固さを知り、今まで黙ってきたこと全てを許す代わりに、あの約束を再び誓ってほしいと言った。
「私はあの約束をいつまでも覚えています。だから必ず私の元へ帰ってきてください。」と。
そして、自分は亡霊となって神子を待ち続けることにした。


残された布都は青娥に説教をされていた。
青娥は屠自古がどうなろうと構わなかったが、布都が人を殺めることで、布都と神子の徳が下がることを危惧していた。
自分がいるから眠りについている間の体のことは心配しなくてもいいという青娥に対して、布都は反論する。
布都は神子が悲しむのを見たくなかったし、なにより復活したときに神子の隣に屠自古がいないのは嫌だった。
青娥は屠自古にも布都にも義理はなかったが、布都が引き下がらないのを見て、渋々ながら折れる。
青娥は、二人が眠っている間、屠自古の面倒を見ることを布都と約束する。



そして、屠自古はいずれ朽ちる人間の体を捨て、この世に留まり続ける亡霊にしてもらうべく、布都の元へと訪れる。
お互いの胸の内を語る二人。

二人はお互いのことを内心はよく思ってはいなかった。
屠自古は、自分にはない能力を持ち、神子の治世を助け、神子の隣に立つにふさわしい力を持った布都のことを羨んでいた。
布都は、自分にはない魅力を持ち、神子の心の支えになり、神子がずっと隣にいることを望んだ屠自古のことを羨んでいた。

だが、二人は互いの思い、神子への想いを知り、ともに神子を支えていくことを誓った。

布都の手によって屠自古は人としての命を終え、神子への想いを持ってこの世に留まる亡霊として蘇る。






亡霊としてよみがえった屠自古は、無事に眠りについた二人を夢殿大祀廟で見守る。

だが、長い年月がたっても仏教が廃れる兆しはなく、神子達は目覚めない。
屠自古は二人の復活に対して、少しずつ疑問を抱く。
青娥に対して全幅の信頼をおけないこともその疑問に一役買う。

あくる日、術が成功したと言い張る青娥と屠自古は小さな口論になり、それがきっかけで屠自古の想いは復活を妨げる仏教や世間への恨みとして暴走し、屠自古は怨霊となってしまう。
青娥は聞く耳を持たない屠自古と戦うことになる。

自分の身を守るため仕方なく屠自古を消そうとする青娥であったが、追いつめた瞬間に布都と交わした約束を思い出す。
その隙をつかれ、青娥は屠自古に形勢逆転を許し、青娥に屠自古の攻撃が迫る。

しかし、間一髪で青娥を庇って二人の間に芳香が飛び込む。
身代わりとなって屠自古の攻撃に貫かれる芳香。

動揺する青娥と屠自古を余所に平気だと笑う芳香。
少しだけ正気を取り戻した屠自古に対して、芳香のことを簡単に説明し、続いて説得を試みる。


青娥は神子さえ復活するなら屠自古と布都はどうなってもかまわないと思ってることを話したうえで、布都と約束したことを語り、術は成功し、人々が聖人を求めた時に必ず神子達は復活することを屠自古に約束する。
また、神子達の復活を確実にするため、仏教の指導者とそれを信仰する民衆を唆し、仏教が妖怪の味方であるように思わせ、仏教への信頼を落とす策を取っていること、仮に仏教が栄え続けても、人々が神子の偉業を忘れた時に幻想の辿り着く場所へと復活する手段があることを告げる。
そして、屠自古にも守るべき約束があるのではないか、と問いかける。

青娥の言葉で神子との約束を思い出し、屠自古は正気を取り戻し、二度と神子との約束を忘れず、戻ってくるという神子の言葉を疑わないことを誓う。


かくして青娥の予想通り、神子の偉業は疑われ始め、二人の眠る神霊廟と共に屠自古・青娥・芳香は幻想郷へとたどり着き、神子達の復活の時が来る。






神子の復活に際して神霊が集まってきたことから、それを異変として捉えた幻想郷の者たちと戦うことになった神子達。

戦いは幻想郷の者たちが勝利を収めたが、無事に復活を果たした神子達はそれで構わなかった。



戦いを終えて、神霊廟の前で再び二人は出会う。

負けたことや復活に時間がかかってしまったことを詫びる神子と、そっけない返事を返す屠自古。
神霊廟を守り、自分たちの復活を見守っていくれたことに感謝を告げるが、それでも屠自古の表情は晴れない。

神子には、屠自古の求める言葉は分かっていたが、それを簡単にいうには千年を超える時は長すぎた。
しかしとじこの責めるような視線と、膨れた表情と、溢れる欲がそれを許さなかった。
神子は意を決してその言葉を口にする。

「ただいま帰りましたよ、屠自古」
「おかえりなさい、神子様」

溢れた感情を我慢しきれず神子の胸に飛び込む屠自古。
その顔は、戦いの傷が残り流れる涙をたたえていたが、最高の笑顔だった。